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2010年1月

DANCE WITH THE DEVIL 悪魔と踊れ

Dancewiththedevil

スタンリー・ブース著。
ローリング・ストーンズ物語。

この伝記本はゲット・ヤー・ヤ・ヤズ・アウト!の解説本で、
初めて知って取り寄せたのだが…。
すごかった…。
手にはいるストーンズ伝記本は(広辞苑並みに分厚い1冊をのぞいて)
ほとんど読んだつもりでいたのに、こんな本がまだあったなんて。

映画「ギミー・シェルター」
映画「コックサッカー・ブルース」
最近出た「ゲット・ヤー・ヤ・ヤズ・アウト! 」のおまけDVD

上の3作を観た後なら、そのすごさがもっとわかる。
これらは70年代前後の一番豪華な時代に撮られたが、
この本には見覚えのある映像のシーンがいくつも出てくるのだ。
映像だけではわからなかった空気感や、
その前後の会話なども読むことができて、映像とあわせると
当時のアレコレがよーくわかる。

当時のストーンズには、得体の知れない人間が
ぞろぞろくっついていた。
映画監督や、ジャーナリスト、カメラマン、
そして、麻薬の売人や、メンバーに気に入られたグルーピーなど。
この本の作者は、この得体の知れない人間たちの1人だった。
ストーンズと共に、ツアーをまわり、ドラッグをやり、
裏の裏まで知り尽くしている人物なのだ。
だから、伝記本というと、とかく、
外からみたストーンズしか語られないが、
この本からは本当のストーンズの様子が伝わってくる。
オルタモントの悲劇(ストーンズコンサート中に起こった殺人事件)
前後の様子は克明に知ることができる。

特にミックファンなら必読でしょう。
ブースはミックと特に親しかったらしく、
ミックとのエピソードは多い。
キースが芸術家らしい名言を連発する一方で、
ミックといえばマスコミ向けの取り繕われた「お言葉」ばかりだが、
この本には、ミックが友達内でしか言わないようなことも書いてある。
ドキュメンタリー映像に使われているシーンの描写の正確さから推測しても、
ブースの描写力は正確だと思われるので、
本書の会話は脚色、創作なしのホンモノだろう。

将来は旅をしていろんな国に住みたい、とか。
俺たちはもうトシだよ。
ビル(ワイマン)なんかもう33だよ!とか。
誰かに「臭い!」と言われて「すまん、俺の足だ」とか。
昨日(飛行機の調子があやしかったから乗るのをやめた)
リトル・リチャードが俺を守るためによこした天使のことを忘れていたよ。
覚えてたら(飛行機が)大丈夫だってわかってたのに。
などなど…。
「お言葉」などではないホンモノの会話が、私としてはうれしい。

特におもしろかったエピソードはコレ。
マディソン・スクエア・ガーデンでのライブ直前。
赤いセーターに緑のズボンをはいたミックは、
ベッドに寝転がって天井を見つめて
「俺は着がえないぜ。このままで出る。」
サム(おそらくメイクさん)が優しく言う。
「着がえるんだよ。」
「いやだね。」とミック。
「わかってるんだよな。出番の5分前になったら
 そうだ着替えようって思うんだだよな。」
「思わないよ。」とミック。
その後5分もしないうちにミックは起き上がって
バスルームからライブ用の衣装に着替えて出てきた。

本書は、主観があまりでてこなくて、事実を羅列してあるので、
ストーンズのもつ空気感が最もよく表現されている伝記本だ。
音楽が好きで好きでたまらなくて、
なんとなくセッションがはじまってゆくけだるい空気や、
それぞれのパーソナリティのもつオーラまでが伝わってくる。
ワイマンとは親しくなかったのかあまり語られないが、
チャーリーの優しさがどういう優しさなのか会話から伝わるし、
キースの独特のフレンドリーさ(ドラッグを分かち合う精神)もよく伝わるし、
ミックの快活さや不安も伝わってくる。
この伝記本ならミックもキースもチャーリーも喜んだに違いないと思う。
だからこそ、ブースは中核に食い込んだ取材ができたのだろう。

数ある伝記本の中には、他のストーンズの取り巻きの書いた本、
トニー・サンチェスの「夜をぶっとばせ!」があるが、
こちらも小説としておすすめではあるが、
こちらは、極端な主観がはいりすぎているので、
もやもやとフラストレーションがたまった本だった。
「悪魔と踊れ」で、やっと満足のいく伝記本に出会ったように思う。

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ROCKER 40歳のロック☆デビュー

Rockers

2008年の映画。
TSUTAYA独占レンタル

ロックバンド「ヴェスヴィオス」は、ドラマーの
フィッシュが中心となって作ったバンドだったが、
デビュー寸前、フィッシュ自身がクビを切られてしまう。
ーいつかオマエらを見返してやる!
それから20年後。
フィッシュは40を越えたが、会社で働く毎日。
一方、ヴェスヴィオスは大御所メタルバンドに成長。
それが気に入らないフィッシュはクサクサした日々を送っていたが、
それが発端で仕事をクビになり、姉の家にころがりこむ。
姉の息子(デブの高校生)は、
プロムバンドのヘルプをフィッシュに頼む。
プロムでドラムを叩き、フィッシュは忘れていた夢を思い出す。
そして、ここに、中年男のドラマーがいる以外は、
ナイーブなポップスをウリにした高校生バンドが誕生する。
メンバーはボーカル(内気なやさ男風)ベース(パンク少女)、
キーボード(でぶの甥ッ子)そして中年ドラマー、フィッシュ。

youtubeでアクセスが増え、レコード会社の目にとまり、
myspaceでファンを増やす、という、
今時の展開からはじまるこの物語なのだが、
これは、40歳の中年男が憧れる、
SEX&DRUG&ROCK'N ROLLの男臭い夢と、
今時の若者の実情とのギャップがポイントだと思う。

メンバーの若者3人は、ツアーに出ても、
ホテルの部屋で、ケータイをいじったり、
PS3で遊んでいるほうが好き。
一方、40歳の脂ぎったおやじドラマーは、
女をはべらせ、派手な羽織を着て、
ぶよぶよした腹を惜しげもなくみせ、毎夜、飲み歩く。
若者3人に、ロックとはこういうものだ!と教えるため、
ホテルで暴れ、ホテルのテレビを窓から落とし、
(ストーンズの真似)しまいには全員逮捕。

逮捕すら40歳のおやじにとっては、ロックンローラーの証。
釈放されると、ファンがだしてくれたのだと思い込み、
ロックの魔法だ!と大はしゃぎ。(これもストーンズのエピソード)
実際は、カンカンの親達がツアー先までやってきて保釈金を払いにきた。
ツアーはもう許しません!のすったもんだの挙げ句、
結局は、親同伴でツアーへ。
最終的には、自分のバンドを奪った憎き昔の仲間、
ヴェスヴィオスの前座をやる羽目になり…。
という物語。

ビックになったヴェスヴィオスはいかにも!な感じのビジュアルで
それだけで笑えるんだけど、プロフィールをイギリス出身と偽り、
わざわざイギリス訛りで話すところにウケた。
ロックはUKが本流という幻想があるのか?

この物語、特典映像で知ったのだが、
実在するビートルズのドラマーが元になっているという。
ピート・ベストは、ビートルズがブレイクする寸前に
クビになったドラマーで、音楽をやめて公務員として暮らした。
今は引退しているが、この映画に本人役でカメオ出演している。
特典映像では、自らの人生とフィッシュの人生を重ねて語っている。
自分には、長年連れ添った妻と子供や孫がいてとても幸せだ。
もしかして、ビートルズの中で一番幸せなのは、僕かも知れない。と。
そこが一番ジーンときたかな。
どんな人生を送っても、自分の人生を後悔したい人はいないのだ。

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ウォーク・ハード ロックへの階段

Walkhard

2007年の映画。

デューイ・コックスは、幼少時、
天才ピアニストで誰からも愛されていた兄を
誤ってまっぷたつにしてしまう。
父親にはっきり「間違った子が死んだ!」と言われ、
そのことがトラウマになってしまう。
兄が死ぬ直前(まっぷたつにされたのにしばらく生きていた)
オマエは自分の夢をかなえろ、と言ってくれたことを励みに、
ミュージシャンとなる。
彼はその後、ロックンロールな人生を送り、
老いて名誉あるステージに立つ。
一見、真面目なのかと思いきや、オバカコメディ。

この映画では、ロックな人生のエッセンスが、
漫画ように表現されていて、実在のミュージシャンの
パロディもふんだんにはいっているので、
知っている人には笑える内容だ。

14歳で高校の体育館をプレスリー風ロックで、
大興奮の渦に巻き込み、PTAや牧師に
「ロックは悪魔の音楽だ!」と迫害され、家をでる。
60年代には、ボブ・ディランに似た感じになり、
あいつのほうが真似してるんだ、と言い、
「あなたが作っているのはプロテストソングですか?」
という記者会見もあって(ボブ・ディランのパロディ)
ビートルズとともにインドへ出かけてマハリシっぽい人に傾倒。
音楽性がサイケになってファンを失い、
スランプがあって、70年代ディスコブームには、
自分の名前が冠になった歌番組をもつものの、
(マーク・ボランのパロディ)コントをやらされたり、
レオタード姿のダンサーと踊ったり、と本来の目的を見失ってゆく…。
その間、もちろんセックス&ドラッグやりまくり。
妻一筋から、バック・シンガーとのプラトニックラブの末の重婚。
そして、妻との離婚。それがばれて、新しい恋もアウト。
ドラッグはマリファナ→コカイン→ヘロイン→LSD、
と、少しずつ段階をあげてゆく。

映画は、老いた主人公が、出番前の楽屋で、
今までの人生を回想するようにはじまるのだが、
最後、同じシーンに戻ってきた時、
主人公がなぜ、出番です、と言われているのに、
しばらく思いにひたっていたかったのか、納得がいくのだ。
観客も波瀾万丈すぎる彼のロック人生を見てきたから。
その瞬間は、少しジーンとさせられた。

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